復活!みちのく助産院だより。~私達、大人になりました~
コッペパン
あだしはダイニングで昼下がりのティータイムを満喫していた。
すると、チャイムが鳴った。
玄関を開けると、そこには誰もいない。誰もいないからドアを閉めようとした時、「ふあ~ん」とパンが焼きあがった匂いが鼻に入ってきた。何気なく下をみたら、ひとかけらのコッペパン。お祭りに帰って来なかったコッペパン。
誤りもしない。そんな彼女をあだしは温かく迎え入れた。でも、彼女は何もしゃべらない。
せっかくのティータイムも、これじゃ廃れてしまう。
次の瞬間、しばこがお勝手口からものすごいスピードで入ってきて、コッペパンはあっという間にご臨終。匂いがしばこにも届いたのであろう。
あだしは、何事もなかったかのように、飲みかけのレモンティーで喉を潤した。
来年は帰ってくるだろうか、コッペパン。
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