幸せの種

楽しかったお正月が終わり、またいつもの生活に戻った。

寒さが厳しい北海道の冬休みは、本州と比べて十日ほど長い。

その代わり、あっという間に終わってしまう三学期には、テスト勉強や行事がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。


ちしま学園にいる中学生は、この時期だけ特別に就寝時間が延長される。

わたしも参考書とノートを片手に、学習室で勉強することが増えた。

きっと今頃、琉君はもっと難しい勉強に取りかかっているに違いないと思うことで、自分も頑張る励みになった。


そして迎えた高校入試。

ちしま学園とさくらハウスの先生方は、市内の高校を受験する生徒を乗せて、それぞれの学校へ向かう。

受験会場へ向かう先輩達の中に、琉君もいた。


「琉君、頑張って!」

「もちろん。絶対受かるから待ってろ」


ほんの一言だけだったけれど、受験前の琉君に声をかけることができた。

どうか、合格しますように。

その日の授業は、ほとんど覚えていない。

ただひたすら、琉君の合格だけを願っていた。


三月十六日の合格発表。

髙橋先生からの電話で、琉君の合格を知った。

琉君は、ちしま学園始まって以来の、特進コース合格者となった。


先生方もみんな、とても嬉しそうだった。

でも、きっと一番喜んでいたのは、わたしだったはず。

心の中で、何度もおめでとうと呟いた。



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