幸せの種

「それからどうなったの?」

「ひとつ屋根の下に彼氏が住んでるって、すごくない?」

「……それが、告白されてすぐ、彼は違う施設に移されちゃって」

「え~っ! それって、一緒にいたら色々ヤバいからってこと?」

「一番の理由は、彼が受験勉強に専念できるようにってこと。ちしま学園では個室が当たらないし、就寝時間も決められてるから」

「そっか……でも、一番の理由ってことは、二番目、三番目の理由もあったんでしょ?」


さすが、やっぱり私と同じことをみんなも気にするんだと思った。


「私達のことも、室担の先生は気づいていたし、園長先生も多分勘づいてたと思うの。でも、それは理由として挙げられなかった」

「じゃあ、何だったの?」


そう問われて、考えた。みんなに理解してもらえるかどうか。

この部屋にいる、私以外の三人はみんな、お父さんもお母さんもいる、普通の家庭の子。

今まで、私のような環境の子がそばにいたこともないだろう。


……理解されなくてもいい。偏見の目で見られても仕方ない。でも、知って欲しいと思って、勇気を出した。


「家族ってどういうものなのかを知らない彼が、家庭的な雰囲気で生活する必要があったから、なんだって」

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