幸せの種


研修医として働く琉君と、ちしま学園に採用された初任者の私は、研修に明け暮れてほとんど一緒にいる時間がなかった。

でもそれは、今までも一緒だった。

ずっと離れて暮らしていたから、慣れてしまい、あまり辛いと思わない。

それより、結婚して誰にも咎められることなく一緒に居られることの方が嬉しかった。



高橋先生は今日も、暴れる中学生男子を行動観察室へ連行し、クールダウンさせながら人生について語っている。

穂香先生は三人の子どものママになり、それでも可愛らしい雰囲気のまま、ネコやピーマンを擬人化して子ども達の人気者になっている。

ミーナちゃんはあれから、どうしているんだろう。

私のママは、彼氏だった人とうまくいかず、私の本当のパパに逢いに行ったという。そのあと、どうなったのかは誰も知らない。

おばあちゃん達と私は、すっかり縁が切れた。

私はもうあの家に戻れないし、戻って来られても困るだろう。


みんなそれぞれの道を歩む中で、私にもまた、新たな道ができた。


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