幸せの種

「サンタからの手紙を読んで泣いているちーちゃんと一緒に泣いていましたね。ここで過ごすうちに、少しくらいのことでは泣けなくなる職員が多い中、藤島さんはいつだって子どもと一緒に笑って泣いて全力投球でした」

「見ていたんですか……」

「職業病です。ほわっとした字で丁寧に書かれた連絡帳の内容がポジティブでいいな、とか、サルのエサにいくらつぎ込む気なんだろう、とか。そういうところも含めて、藤島さんが好きです」

「ほほほ本気ですか?」

「私はいつだって本気ですし、嘘は嫌いです。そうそう、今日の夕食ですが、一緒に食べに行きましょう。家の冷蔵庫、空っぽなんですよ。それで、一緒に幸せになるための話をしましょう。いいですね?」

「……私でいいんでしょうか」

「藤島さんだからいいんです。ちーちゃんや他の子ども達が見て安心できる『幸せのお手本』になれるように、私も努力します。まずはクリスマス会を成功させなくては」



(……策士だ。ここまで考えてあの手紙を書いていたなんて)

真夏のサンタは、自分にも幸せの種をプレゼントしてくれたのだと、穂香はようやく気づいた。

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