羊だって、変るんです。
家に帰ると、道場から声が聞こえなくなっていて、稽古の時間が終わった事が分かる。

二人が居間に入ると、食事をしていた時の机が二つ横に並んで置いてあり、その上には所狭しと料理が並んでいる。

廊下側には蔵人が座り、向かいに紫苑、その横に怜苑が座っている。

蔵人の右斜め前に祖父が座っていた。

「お帰り!と、いらっしゃい!」

顔立ちが綾子に似た、怜苑が片手を上げて声をかけて来た。

「ただいま!おじいちゃんと、怜苑は初めて会うよね。神宮寺凱さんで・・お付き合いしてます」

「神宮寺凱です。杏奈さんと、結婚を前提にお付き合いさせてもらってます」

「祖父の重蔵(しげぞう)じゃ。よろしくな」

「杏奈の兄の怜苑(れおん)です。よろしく」

見た目より柔らかい笑みを浮かべて挨拶をする凱に、一瞬間があってから二人が挨拶を返すと、早々に宴会が始まった。
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