陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】

――今の声は、黒の式のものだった。

だから俺に向けられたものだが、波動で黒にもわかっているだろう。

「戻る」

言い置き、家に向けて歩き出した。

黒は現在、影小路の所有する庵(いおり)にいる。

月御門の本家は京都に構えているが、影小路は天龍(てんりょう)という山の中に本邸がある。

本家に次ぐ高位に『小路十二家』というほど、格の高い分家が十二もある流派なので、影小路所有の家は各地にある。

黒がいるのは、その中の一つだ。

「白――」

「うちに来たら」

顔だけで黒を振り返る。

< 283 / 413 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop