陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】
――百合姫の憑き物は、祓ってはいけない類のもの。
そして百合姫は、黒との仲が険悪だ。
俺にとっては、生まれた時より傍にいる妹のような親友。
百合姫も俺が女だと知る数少ない一人なのだが、その俺を、嫁にする! と堂々と宣言する黒に対しては反感しかないようだ。
三人集まれば自分だけが護られる対象であるのも嫌らしい。
「ん?」
ふと、耳に言霊が届いた。
式に下していなくても、《契約》した妖異や、神や鬼の類と声の送り合いが出来る。
妖力が高いものではないとその声は人語にはならないが、俺はそうではないものの声も聞くことが出来た。
それは母様ゆずりらしい。