陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】
応接室に乗り込んで来たのは、着物姿の女性、先ほどまで離れた場所――天龍という山の中の影小路本家にいたはずの紅緒様だった。
「紅緒っ、病院で叫ぶんじゃないのっ」
後ろから小声で怒って紅緒を押さえたのは、同じ顔をした双児の姉である紅亜様。
「姉様(ねえさま)! 止めないでください! 黒藤は勝手にわたくしに解術(かいじゅつ)したのです! お前、わたくしが目覚める時間まで操作して何をする気だったのです!」
「……やっぱりお前の仕業かよ……」
いきり立つ紅緒様と、それを羽交い絞めにして止めようとする紅亜様。
小埜家の三人は呆気に取られてしまい、紅緒様の言葉を理解した俺はため息を吐いた。
「紅緒様の封じに綻びなんてなかった。……黒が勝手にいじって、紅緒様の目覚めと真紅の封じが解けるのを早めた。……黎明のを生かすためか」
「まあな」
黒の軽い答えに、俺は苦虫を噛んだ。
だからこいつは……とんでもないことを、なんでもない顔をして飄々とやってのけるんだからなー。俺が敵うわけないって。