陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】
「話が終わるまでは起きてる。黒藤が白桜に不埒な真似をしたら、里おじいちゃんに合わせる顔がないもの」
「百合姫……」
キッと、黒を睨む百合姫。ほんとここは仲悪いなあ……。
両方とも大事な幼馴染だから、二人に板挟みにされるのでいつも困っている。
俺が黒を呼んだのは、母家の私室。
客間でもいいのだけど、内容が、な……。
当然、天音、無炎、そして黒の式でありながら見張り役の無月も同席する。
仕事の話と聞いて、百合姫はこの場に入ることは辞したが、居間で起きているのだろう。
いつもなら百合姫の護衛に天音をつけるのだが、天音も無炎も、俺と黒を二人きりにすることの方を厭(いと)うので、俺が別邸に呼んだ家人の一人に一緒にいてもらっている。
「んでさ、お前は真紅嬢に逢ってどうするつもりだ?」
黒と、窓を開けた縁側で話す。
十五夜も過ぎた頃合いだが、屋敷に結界を張っているのでその中では大して寒さは感じない。
先ほど黒が大声を出しても、結界に閉ざされるので近所迷惑にはならない。
月は欠け始めている。