陽華の吸血鬼①【一人称修正ver.】【完】
「んー? 真紅は影小路の血筋ですよ、って言う?」
「怪しまれるだけだろ」
いきなりそんな人が現れたら。
「従兄のお兄さんですよ?」
「それはそうだが……真紅嬢は紅緒様のことは知らんだろう? 紅亜様がお前のことを知ってるかも怪しいし……」
紅亜様は生後間もなく養子に出されていると聞く。
本家の内情に、どこまで精通しているのか……。
「じゃー一から説明するしかねーのか……」
黒藤は目に見えて項垂れた。面倒くさいだろうが、それが正道だろうに。
「……黒」
「うん?」
「お前の座は、揺らがねえんだよな?」
確認に、黒は唇の端に笑みを載せた。
「さあ?」
愉快そうな顔をする幼馴染を睨む。
当代最強の陰陽師は、間違いなく黒だ。
しかし、黒は絶対的な力を持つ始祖の転生ではない。
もしも真紅が陰陽師として目覚めることがあったとき、当代最強の名を冠するのは、黒のままなのか――そして小路の跡取りは。