大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「ねぇ、私、そんなにわがままじゃない
でしょ?
私、ハヤにわがまま言った?」

私が口を尖らせると、

「くくっ
大した事はありませんよ。
崖下のササユリが欲しい…とか、
空飛ぶヤマバトを射よ…とか、
ああそうそう、
星をひとつ取ってきて…とか。」

と、ハヤは笑う。

私は、返す言葉もない。

「だけど、俺にだけだった。
タテにも兄さんにもそんな事を言ってるのを
聞いたが事ない。
だから、俺は必死でアヤの…お妃様の願い事を
叶えようとしたんだ。
大好きな女の子の特別な男でいたかったから。
お陰で、弓も上手くなったし、
崖下に降りられる体力と根性もついた。
まぁ、星は取れるようにはならなかった
けど。」

と、ハヤは苦笑した。

「大王が俺をお妃様の護衛にしたのは、
きっと、絶対に無事で帰ってくるための
自分への鼓舞だと思う。
もし帰って来なければ、今度は俺がアヤを
大王から奪うから。
そうさせないために、絶対帰るぞ!って誓って
吉備に向かったはず。
だから、きっと帰ってくる。」
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