大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「大王を困らせたいわけではないんです。
大王を苦しめたいわけでもないんです。
ただ、食べられないだけで…」

大王は国中から、私が食べられそうな果物を集めてくれていた。

桃、山葡萄、木苺、瓜、梨

他にも遅生り(おそなり)のビワやスモモ

早生りの柿やアケビ、ナツメ

各地から私のためだけに珍しい品が届けられる。

それが申し訳なくて、心苦しくて…


「大王、お願いがあります。」

私が言うと、

「なんだ?
アヤの望む事なら何でも叶えてやる。
言ってみろ。」

大王の声が、表情が、とても優しい。

「私を里に帰してください。」

大王の表情が曇った。

「アヤ、それだけはできない。
アヤは俺のそばにいるんだ。
アヤを手離す事は、できないんだ。」

大王の声は、とても苦しそうで切なくて聞いているだけで涙が溢れる。
< 51 / 147 >

この作品をシェア

pagetop