アダムとイヴ
学生時代の話を何気なく聞いてしまっただけで、佐野なんかに興味なんてない。


あるはずもない。


二人きりで居てもドキドキもしないし、話をするのが楽しいってだけだ。


だから、恋になんてならない。


"同僚"以上の感情なんてない。


強いて言えば、"友達"だ。


「ざーんねんっ!俺は…ちょっとだけ、伊東ちゃんが好きだよ」


「はいはい、ちょっとだけね…」


クスッと笑って茶化して言うから、直ぐに冗談だと確信する。


佐野の感情だって、友達止まりに違いない。


「佐野センッ、伊東先生、デートぉー?」


かき氷を食べ終わり、その後の巡回中に我が校の生徒に出くわす。


薄暗くなり、そろそろ花火大会が始まる時間が迫っている。


「ばぁーかっ!生徒指導だよ。伊東先生の腕章を見なよ?」


「わぁ、本当だ。デートかと思ったよ」


出くわした生徒は女の子達のグループで、皆が綺麗に着飾り、可愛らしい淡い色の浴衣や大人っぽい紫の浴衣を着ていた。


とても楽しそうに弾んだ声で話している姿がキラキラ輝いていて、可愛らしいなぁ・・・と思った。


自分にもこんなに可愛らしい時代があったのだろうか?とふと物思いにふけるが、愛想もなくて素直じゃない私にとっては、程遠い記憶だったのかもしれない・・・。
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