目を閉じたら、別れてください。

式場の提携先のドレスサロンは、館内に一つ、駅前にまで足を伸ばせばもう一店。
けれど忙しい私たちは、式場での打ち合わせと同時進行したかったので館内のドレスサロンにした。

一日一組しか式を上げれない館なので、一組一組きちんと見てくださっている。
館内のドレスサロンは、駐車場を挟んで二階建てのこじんまりしたアトリエのような場所。
中に入ると二つのテーブル席と大きな試着室。その裏には色別にドレスが分けられて並べられている。駅前の方が新しくて品ぞろえがいいらしいが、このドレスサロンにも200着以上のドレスが並べられていた。

「おー、やっぱ男のタキシードは少ないな。10着しかない」
「メインは私だからね」

男の人は、お色直しであまり衣装を変えないらしい。タキシードと袴のみで、わたしよりシンプルで速攻で決めてしまった。

ドレスサロンの担当さんは、私のドタキャンを責めるようなそぶりもせずにこにこアドバイスをしてくれる。
スタイリッシュなスーツにお団子姿の年齢不詳の美人だ。

「うーん。もう自分にどれが似合うか分からないなあ」
一回の試着に三着まで。なので、純白のドレス一枚と、カラードレス二枚を選びたいのだけどどれもピンとこない。

「じゃあ俺が選んでみてもいい?」
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