目を閉じたら、別れてください。

神山商事のお得意様であるおじいちゃんを特別御もてなししたいのか冗談かわからないが、私が首を振る。
「おじいちゃん、上にぱっかーんて開く車なら乗りたいって言ってたけど」
「ランボルギーニ? それなら実家にあると思う」
「やめて」

テーブルクロスを敷いて、フォークとナイフを並べだした上品な彼を見る。
私はハンバーグぐらい、箸で大丈夫だ。ワイングラスまで取り出してきたけど、酒は太るから私は飲みたくない。のに目の前で飲むとか、この野郎。

「……なんかお前のご飯少なくね?」
「今日は、泰城ちゃんとお昼に新作のロコモコ弁当とアップルパイを食べたのでセーブでーす」
「ふうん?」

ワインセラーから白ワインを取り出した進歩さんが、ハンバーグを見て私の顔を見た。
ばれたのか、一瞬ドキドキしてしまった。

「お前、今度嘘ついたら、寝室のドアが開かなくなるぞ」
「なにそれ、いやらしい」
「俺が満足するまで開きません。~灯りは消さない編~」
「ば、バカじゃないの」

いまだに真っ暗にしてイチャイチャするのに文句を言ってくる。
が、豆粒みたいな小さな電気の下でも自分の体のラインが見られるのは、嬉しくない。

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