目を閉じたら、別れてください。

でもなあ。このシチュエーションって食べた後そのまま~の流れだよね。
流石に、一年前に別れた相手と簡単に寝るわけではないけど。

うだうだ考えても仕方ないので、一杯だけ緊張を和らげるためにお酒を飲む。
日本酒は癖が強いのであまり好きではなかったのに、ボトルごとテーブルに置かれていたお酒はほんのり甘くて、鼻にスッと甘い匂いが残る。
 安いカクテルやチューハイよりも癖になりそうな甘さだった。

しかも天ぷらによく合う。どうしたものか、二杯目もすぐに飲み干してしまった。

三杯目を注いでいたら、彼からメールが届いた。

『寝室の方に浴衣あるから。風呂入るなら使え』

確信犯だ。最初からそれ狙いか。

私もお酒の力を借りて返信した。

『話はあるけど、エッチはしませーん』
送信ボタンを押して、天ぷらを平らげる。
次はお刺身だ。綺麗に数切ずつ並んだ刺身に、四杯目のお酒が喉を潤していく。

『それは、お前しだいだろ』

短い言葉だけ返信が来た。これだけでは怒っているのは笑っているのかほくそ笑んでいるのか、悲しい顔をしているのか分からない。

五杯目のお酒を飲みながら、私はどんどん返信した。
私は自分の限界を知らなかったし、自分の理性がなくなるぐらい酔うこともなかったので、知らなかった。酔うと、爆メールしてしまうことを。

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