難病が教えてくれたこと
俺の憧れの先輩。
次は俺が頑張る番だ。
先輩のために、本領発揮しないと。
「更科、やっぱり上手いんだよなあ…」
「何言ってるんですか、先輩も上手いですよ。」
自信もってよ。
自信があってこそ、勝てるんだから。
「いやあ、俺は…」
「先輩、自信持ちましょうよ。」
もう、弱気な人は見たくない。
李那だけで十分だ。
李那も元々強気だったんだ。
それなのに…
もう、見たくないんだ。
俺の中で弱気なのは李那だけでいい。
「先輩の分も頑張りますから。」
俺が、頑張る番だから。
先輩の分も。
「一緒に、勝ちましょうよ。今度の試合。」
…李那の為にも。
頑張らないと。
「ーうわ、なんか…似合わん。」
「?!」
突如聞こえた女の子の声。
振り返ると李那がいた。
杖をついて、来校証を首から下げて。
先輩も驚いた顔で李那を見る。
「こんにちは、加藤先輩。」
「あー、如月さんか!誰かと思ったよ!」
先輩とは顔見知りなのか…?
「私、いろんな部活回ってたから。
助っ人に。」
笑って先輩を見る李那。
笑顔だ。
久しぶりに見た。
「李那…」
「ん?」
「なんでここに…?」
「散歩。」
…はい?
「だから、散歩。」
この子の散歩の範囲広すぎない?
と思ったのは俺だけ?
「蒼空、ほんとにバレーできたんだねえ…」
「俺の事馬鹿にしてね?」
「あ、バレた?」
ぺろっと笑う李那だが、体はしんどいはずだ。
「ね、ねぇ、君ら…付き合ってるの?」
先輩がおずおずと俺の顔を見る。
俺は李那と顔を見合わせて向き直る。
「「付き合ってないです。」」
…一緒に居るからか。
よく勘違いされるけど。
李那も俺も笑って答える。
「…そうなのね…」
先輩は心底残念そうな顔をして残念そうな声を出す。
…そんなに?
「蒼空ー、そんなこと言っちゃダメだよーそんなにはっきり言っちゃダメだよー」
…思ってないでしょ、そんなこと。
普通に棒読みですが?
李那さん…?
「にゃはは」
ふざけて笑う李那に安心感を覚える俺。
なんだかんだ言って李那の笑顔に癒されてきていたのも事実だ。
学校で李那を見なくなってしばらく経つけど、まだ慣れない。
本来なら隣で笑顔見てきてたはずだから。
…隣と言うか、すこし後ろに下がったところで見てきてたはずだ。
「まあ、私は帰るからしっかり練習しなよ。蒼空。
先輩の足引っ張ったら許さないから。」
…俺だって引っ張るつもりは無い。
役に立ちたいから今回の試合出るんだ。
今までの恩を返すために。
【更科蒼空side END】
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