難病が教えてくれたこと
第14話
【更科蒼空side】
李那が眠って4日。
李那の携帯から李那が目覚めたとLINEが来た。
よく見れば李那のお母さんからの連絡だった。
『こんにちは、母です。
今李那が目覚めました。』
慌てて俺は返信をする。
『こんにちは。そうですか、良かったです。』
…うーん、愛想がないのは仕方ないよな。
今に始まったことじゃねえし。
『今から脳波の検査です。』
李那のお母さんと李那の区別くらい俺にもつく。
第1に李那はこんな敬語使わない。
区別の仕方が送られてくる内容と書かれている文面。
李那のお母さんは真面目な人だから漢字のミスはあっても綺麗な敬語を使っている。
『異常がないことを願ってます。』
もし脳に異常があったら…
大事な娘に何かあったらどうなるんだろう…
『海澪、李那目、覚ましたって。』
『ほんと?!』
海澪…李那のことどんだけ好きなんだよ…
こんな直ぐに返事が来るなんて思ってなかったぞ。
『今から脳波の検査らしい。』
『…何も異常なかったらいいね。』
土曜日の昼下がり。
再び李那のお母さんから連絡が来た。
『こんにちは、母です。
脳にはなんの異常もありませんでした。
ですが、日頃からのストレスが原因で失声症になりました。』
…失声症?
声が出なくなるあれか?
ストレスより、ショックが大きすぎたのか…?
死にたいのに、死ねなかったショックが。
『李那、失声症らしい。』
何かある度に海澪に連絡しておく。
さすがに俺ひとりでこの大きな事実を抱え込むのは…無理だ。
『李那が?』
『ストレスが原因らしい。』
李那、ストレスなんてないよーって顔してるのに…
顔に出さない子、だってこと忘れてた…
『李那らしいね。』
『うん。』
李那、なんでだよ…
ストレスも分かち合って欲しかった。
友達ってこういうもんじゃねぇの?
迷惑かけ合うのが友達じゃ…ないのか?
【更科蒼空side END】

【中矢裕side】
李那が目覚めた。
李那のお母さんから連絡が来た時は心底嬉しかった。
これからはもっと、李那を支えていけるような男になるんだ。
「李那!」
「…」
「裕くん…」
李那のお母さんが涙を流している。
連絡来てたけどほんとだ…
李那は真っ暗な瞳で何も見てはいなかった。
「…ずっと、何もしようとしないの…」
「……」
李那は母親はおろか。
何も見ていない。
目は開いているのに何も見ていない。
そんな瞳。
深い闇に包まれた瞳。
その闇から救い出したい。
「…李那、俺だよ。」
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