難病が教えてくれたこと
「おい、李那落ち着けって。」
「だって、お兄さんが…」
「今探してんだろ?大丈夫だって。」
別れる間際のあの目。
病室の前を通った時に見てた紙。
いろんな色のペン。
紙くず。
…もしかして、彼女に会いに行った…?
あの弱ってる体で…?
「…私、無責任な事言ったかもしれない。」
「え?」
「彼女に会いにいかないのって言ったの。」
「まさか。そんなの真に受けるようなバカではないだろ?」
裕くんの言うことも最もだ。
確かに10代の女の言うことなんて真に受けるようなことでは無い。
「…探さない?
大体の住所はわかる。」
「「言うと思ったよ…」」
裕くんともう1つの声。
「あ、医者。」
「そうそう医者。
そろそろ言うかなと思ってたけど、ほんとに言うとはね。」
はあ…とため息をつく医者。
「今、君を外に出す訳にはいかないよ。
臨月だよ?
予定日もう少しだよ?」
…うーん…
確かにお腹痛い感覚短い…けど…
「その住所ってどこ?」
「いやいや、僕の話聞いてる?」
「李那じゃなかったらいいんだろ。」
裕くんはそっぽ向いて私にお兄さんの彼女の住所を聞く。
「俺が代わりに行くよ。」
【如月李那side END】

【中矢裕side】
…さてさて…?
大体の顔は分かるし名前も分かってるけどどこにいますかねえ…
西宮良夜さん。
この辺のはずなんだけどな…

……

『裕くんが…?』
『今の李那は大事な体だ…何かあっては俺も困る。』
『…』
『俺を信じてくれ。
俺は約束は守る。』
李那は強い眼差しで俺を見た。
『…分かった。裕くん…お願い…!』

李那の事だ。
自分で行きたかったんだろう。
でもダメだ。
新幹線とタクシーを使わなければ行けないなんて危険すぎる。
地図を見て、その辺の人に聞く。
「すいません。」
「?」
「ここに行きたいんですが…」
「ああ、西宮の嫁の家か。せやがったらこの道を真っ直ぐじゃけ。左に郵便局あらぁ、そこを曲がったら一本道じゃ。」
郵便局を曲がる。
「ありがとうございます。」
「どっから来たと?」
「まあ色々あって東京から来ました。」
「東京?!そりゃあご苦労さんじゃけ。気いつけて行きや。」
「はい。ありがとうございます。」
そっか。この辺の人、訛ってるんだ。
まあ一応西宮さん東京に住んでたって聞いたからそっちも行ってきたんだけど…
まあ、俺は東京じゃねえ。スマンおじさん。
「…あ、これか…?」
俺の頭が正常ならばこれだ。
手にしている地図。
そしてさっきのおじさんから聞いた場所。
表札。
まちがいない。ここだ。
…李那、着いたよ。
ピンポーン…
でか過ぎないか?
ーガチャ。
「あ、こんにちは…」
「キミは…?」
出てきたのは良夜さん…では無い。
少し…良夜さんより歳が低い気がする。
「どうも…西宮良夜さんを探しているのですが。」
「ああ、良夜か…」
1度目を伏せた男の人。
弟さんかな…?
「兄貴なら帰ってきてないよ。
…いや、帰ってきたのは帰ってるんだ。
まあ、上がれ。」
…俺様なのかな?
タバコを咥えて歩き出した男の人。
うーん…良夜さんが優しい人だからかな…怖い。
「まあ待っとけ。適当に寛いでろ。」
通されたのは恐らく応接間。
広すぎる…
「よう、お前。どっから来たんだ?」
「まあ、色々ありまして…近畿の方から…」
「兄貴とはどういう関係だ?」
「…彼女の、隣の病室の方でした。」
ピクリと眉を動かし、タバコを咥え直した。
「俺は、西宮良斗。良夜とは双子だ。
良夜は兄であり、時には俺のいいライバルだ。」
まさかの、双子。
「一旦帰ってきて、またどっかいっちまったんだ。
ガンが治ったのかと思い、特に何も考えていなかった。
だがよ…兄貴の部屋であるものを見つけて少しばかり焦りが出てきたんだ。」
…あるもの…
薬とか、診断書…
見られて困るものとすれば、診断書だよな…
「それがこれだ。机の上にあった。」
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