難病が教えてくれたこと
「寒いし、中入る?」
「うん!」
叶夢くんは玄関を開けると先に私を入れてくれる。
…紳士的だなあ…
「コーヒーでもいい?」
「え、いいのにー」
「寒いから。」
僕がね。と続ける叶夢くん。
確かにあの寒い中トレーナー1枚は寒いと思う…
「はい、お待たせ。」
叶夢くんの淹れる飲み物はいつも美味しい。
「ん、あ、美味しい!」
「そう?良かった。」
…なんだろうー…
不思議な味がする〜…
「さて、問題です。
その飲み物にはあるものが入れてあります。
そのあるものとはなんでしょう。」
…んー…
飲み物自体は甘いココアなんだけどなあ…
叶夢くんがこうやって意地悪な質問する時って…
普段は入れないようなものを入れてるんだよねえ…
「…ヒントは…果物?」
…果物…果物…
冬に飲むといい果物…
「…柚?」
「ん。正解。
よく分かったね。」
叶夢くんはコーヒーを飲みながら優しく微笑む。
「柚かあ…その発想はなかったなあ…」
「暖かくなるでしょ?
本当は生姜入れたかったの。」
生姜?!
確かに体は暖かくなりそうだけど…
ココアには…
合いそうで合わない気がするよ…?
「冗談だよ。」
「もー!!」
叶夢くんは楽しそうに笑う。
…こんな顔、最近全然見てなかったなあ…
叶夢くんの本当の顔。
「希望、おいで。」
叶夢くんが腕を広げて私を呼ぶ。
…そんなに寒いのかな?
「…はあ〜…希望暖かいなあ…」
細くて華奢な叶夢くんの体。
だけどちゃんと筋肉はあってしっかりした体つき。
甘いフェイス。
…カッコよすぎる…
「希望はどう?
こうやってして欲しかったんでしょ?」
「?!」
…あのお願い覚えてたの?!
正直叶夢くんなら忘れてると思ってた…
「希望のお願いなら僕覚えてるよ。」
「私のお願いなら…?」
「うん。」
叶夢くんはにっこり笑って私の肩に顔を埋める。
サラサラの髪が私の肌に当たってくすぐったい。
【柊希望side END】

【中矢叶夢side】
…小さい頃もこうして希望を抱きしめたっけな…
希望と希望の両親には感謝してもしきれない思いがいっぱいあるよ。
僕が寂しい時も希望はそばにいてくれた。
お父さんには大切に育てられてきたと思う。
お母さんがいなくて寂しい時、お父さんが仕事で居ない時、僕は静かなこの家で一人で泣いていた。
そういう時に決まって希望は僕を外へ連れ出してくれた。
希望は僕にとっての太陽なんだよ。
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