難病が教えてくれたこと
「…考えてないの?」
「だって裕くんが考えてるものだと…」
裕くんは大きくため息をつくと私を軽く睨む。
そして呆れたようにいつものお店に行く。
ファミレスなんだけど、美味しいの、ツナパスタが。
「…ほんとそれ好きだよなあ…」
「うん。ツナ大好き。」
…美味しいなあー
これは一番人気だと思う。
…なのにメニューで一番人気なのは無難なナポリタンと記されている。
何だ、どうしてなんだ。
ちくしょう、こんなに美味しいんだぞ。
「パスタと俺どっちが好き?」
考える余地もないでしょ。その質問。
「勿論、パスタだよ。」
やっぱり食べ物でしょ!
ツナでしょ!
「ぇぇえ…」
「そういえば今日何して過ごしてたの?」
「ボーリング行ってた。」
…ボーリングかあ…
私はガターしか出ないからなあ…
たまにスペア取るくらい。
ストライクはなかなか出ない…
「あれ?あんた…」
…ん?
誰だ?この女の人。
見覚えあるような、ないような…
「絶対分かってないな、あんた。」
「えーっと…」
「五十棲だけど。」
五十棲…
五十棲…
五十棲…夕彩…
「あ!夕彩さん?!」
「やっと思い出したか。」
五十棲夕彩【イソズミアカネ】さん。
私より2つ年上でテニス部だった人。
今は確か…なにしてるんだっけ?
「夕彩さん、奇遇ですね!」
「ほんとだな、普通にご飯食べに来ただけなのにいるとは。」
「え、1人ですか?」
「うん。」
夕彩さんいつ見てもかっこいいなあ…
「いつも通り、車で来てるよ。
この間の大会も見た。」
「え、来てたんですか?」
「うん、海澪元気?」
あ、確か海澪の先輩だ。
だから私もこうして仲良くなったんだっけ。
「今日も仲良く過ごしておりました!」
「そんなこと聞いてねぇよ。元気かって言ってんの。」
いやん怖い。
安定に短気なんだから。夕彩さんは。
…人の事言えないんだけどさ。
「元気ですよ!」
「そうかそうか。」
夕彩さんは満足そうに当然のように相席してきてパスタを食べ始めた。
相席は別に今に始まったことじゃない。
そう、夕彩さんは…
ツナパスタを食べている!
同類!
「…夕彩さん!」
「うるせぇよ。食事中は?」
「静かにします…」
「よし。食い終わるまで待て。」
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