難病が教えてくれたこと
「わ、分かりました…」
…声が震えてるよ?
ふふっ、加減知らず最高!
「李那、…大丈夫か?」
「…今、そのカッコで言われても。」
今、可愛いカッコで心配されても困るんだけど。くくっ…
「はーい!2年3組!来てくださーい!」
ヤバっ、楽しいわこれ。
「…李那、楽しんでるな…?」
「うん!」
海澪は赤ずきんのバスケットの中からチケットを取り出した。
「現在3人以上でのご来店で半額でーす!」
…これはなるべく使いたくなかったけど…
仕方ない。
暑くなってきた私たちはクラスまで戻る。
…あれれ…
「ちょ、委員長!どんだけ客呼んでるんだよお!」
衣装係の人らが私を見て泣きそうな顔をしている。
「狼と赤ずきんとアリスに来てって呼ばれたから来たよ!とか言われるし!」
「委員長おおおお!!」
…こんなによんだ覚えは…ありません…
「わかった!私も手伝う!
作るのフル稼働して!私もフロア行くから!」
これでもバイトで接客は得意なんだ!
喫茶店でもバイトしてたし。
これくらい余裕余裕♪
「はい!ご注文は?!」
「えっ…と…」
「まだないなら呼ぶんじゃないよ!噛み付くよ!」
あーもう!
なんでこんなに注文しないくせに呼ぶかなあ?!
【如月李那side END】

【更科蒼空side】
「ご注文は以上で?」
李那から教わった営業スマイル。
これなかなかしんどいぞ。
しかもお客さん俺が男だと思ってない。
女だと信じて疑ってねぇ。
「はい!お待たせしました!さっさと食べてさっさと出てってくれなきゃ引っ掻くんだから!」
…流石李那…
ノリノリだな。
「よう蒼空。」
「あ、裕さん!」
「李那忙しそうだな。」
「まあ、昼時ですし…」
裕さんは苦笑しながら俺らのクラスを覗く。
裕さんの視線の先にはやっぱり彼女。
「あれっ、裕くん?」
「やあ、海澪ちゃん。」
裕さんに気づいた海澪はこちらにやってきた。
「李那呼びましょうか?」
「いや、ひと段落するまで待つから大丈夫。」
待つのは得意なんだ、と裕さんは続ける。
李那は両手にお盆を持ってクルクル忙しく働いている。
「もうすぐピークは去ると思いますから…」
「だね。だんだん引いてきてるもんね。」
李那の顔も疲れきっている。
海澪もいつの間にか戻って空いた机を拭いたりお水を持ってきたりと忙しなく動いてる。

「ー…つーかーれーたー」
「お疲れ様。」
「委員長、古川、アリス、ヘルプありがとう!」
「もう、私呼び込みだけだったのに…」
「アリス言うなあ!」
誰だよ、俺をアリスにしたの。
これ絶対確信犯がいる。
殆ど男子は着ぐるみなのになんで俺だけ女装なんだよ、全く…
「委員長、休憩どーぞ、古川とアリスも。」
「だからアリスじゃねぇって…」
李那は裕さんが待ってる扉まで一目散に走っていった。
海澪はキョロキョロ辺りを見渡している。
「…誰か探してるの?」
李那は裕さんと手を繋いで不思議そうに尋ねる。
「あ、うん…どこだろ…」
「あー、柊?」
「え、うん。」
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