なりゆき皇妃の異世界後宮物語

「はい……。朱熹様は府庫に行くのを楽しみにされておりまして、毎日のようにお供しておりましたのですけれど、どうやら本が目当てではなかった様子で……」


「府庫で、男と密会していたと!?」


　秦明の問いに、林冲が頷き、曙光は目の前がクラクラとしてきた。


　まさか、朱熹が別の男と……。


　予想もしていなかった展開に、曙光は愕然とした。


「それで、相手は一体どんな奴なんだ？」


　秦明は、多大なショックを受けている曙光を横目に見て、笑いを必死で堪えながら聞く。


「それが宮廷では見かけない男で……革胡という楽器を弾いている風変りな青年なのです」


　曙光と秦明は互いに目を合わせた。


　秦明からは笑いが消え、曙光は皇帝の顔に戻る。


「ややこしいことになったぞ……」


　秦明はポツリと呟いた。