なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬天から与えられし力
「高菜餡餅(シャーピン)三個と肉汁餡餅二個ね、はい、おまち!」


 頭に巻いた三角巾がやけに似合っている朱熹の威勢のいい声が店内に響き渡った。


活気のある店内には、肉や野菜を蒸した食欲をそそられる匂いがふんわりと漂っている。


天長江国の首都、高蘭(こうらん)の大通りには三千を超えるお店が軒を連ねている。


その中でも、朱熹が働いている餡餅屋は大人気で、いつも行列ができているちょっとした有名店だ。


店内は調理する場所しかなく、お客は勘定台から商品を受け取る。


従業員は老夫婦と朱熹の三人だけ。


とても小さな店なのだが、大層美味しいと評判となり、今では地方からもわざわざお客が訪れるほどの人気店となっている。


『あー、早く食べたい』


『ここの餡餅は最高なのよね』


 黙って順番を待っているお客たちの声が聴こえる。
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