なりゆき皇妃の異世界後宮物語
(そうよ、うちの餡餅は最高なんだから)


 朱熹は心の中でお客たちの声に返答する。


「はい、お待たせしました!」


 二十代前後とおもわれる一人の男性客に餡餅を手渡すと、彼はじっと朱熹を見つめた。


(え……何かしら)


『……もうちょっと鼻が高ければ好みなんだけどな』


「悪かったわね、団子鼻で」


「えっ!?」


 思わず口に出てしまった言葉に、しまった! と焦りが顔に出る。


 そんな朱熹よりも驚いているのが青年だ。


声に出したつもりはないのに、返答された。


しかも本人には聞かれてほしくない言葉に対する返事だ。


「え……あの……」


 狼狽える青年に、朱熹はニコリと笑顔を向けた。


「ありがとうございましたー」


 まるで、自分は何も言っていないかのように振る舞い、そして次のお客の注文を聞く。
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