なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 真剣な雰囲気。


 甘い時間を望んでいた自分が恥ずかしくなる。


 それでも、二人でいられるこの時間がたまらなく愛おしい。


「なぜ兄さんを差し置いて余が皇帝となったのか……。

それは五年前のあの南部で起きた大洪水にまで遡る」


 五年前の大災害。


そのことを思い出すだけで朱熹の胸が鋭く痛む。


 あの洪水に巻き込まれて朱熹の両親は死んだ。


「あの時、一万人以上の犠牲者が出た。

その中に前皇帝含む、皇族の多くが犠牲になったことは知っているだろ」


「はい……あの災害は、天江国の国民全員が悲しみに暮れました」


 毎年、清明節になると皇族たちは墓参りのために南部にある御陵に赴く。


 運悪くその時期が大災害と重なり、多くの犠牲者が出た。
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