なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 中途半端な気持ちではなく、真剣に恋焦がれているからこそ、一歩が踏み出せないのだ。


 曙光は、最後の矢を放つ段取りに入った。


 弓を大きく引き、神経を集中させる。


「お前は大切なものを失うのが怖いんだ」


 まさに矢を放とうとしたその時に言われた秦明の言葉にハッとして、曙光の指先が揺れた。


 矢は美しい軌道を描いて、的当てに飛んでいく。


しかし、矢が貫いた場所は、真ん中の赤丸からほんの少しずれた場所だった。


「よっしゃ!」


 秦明は大きくガッツポーズをした。


 曙光はまさか外れるとは思っておらず、呆然と刺さった矢を見つめている。


「ま、待て! 今のは卑怯じゃないか!?」
< 186 / 303 >

この作品をシェア

pagetop