なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 喜びを隠そうとしない秦明に、曙光は慌てて言う。


「なにが卑怯だ。勝負は勝負。それに、もしも俺がお前の命を狙う立場だったのなら、容赦なくお前の弱みを利用するよ」


「俺の弱み……」


 今までどんなことがあっても、心が揺らいだことなどなかった。


 こんなにも長く、思い悩むことも初めてだった。


 自分には弱みなどないと思っていた。


 だが……。


 曙光は、真ん中からわずかに外れた矢をじっと見つめた。


「過信するな、分かったな」


 秦明は真面目な顔をして、曙光を指さした。


 悔しいが、負けは負けだ。


 曙光は黙って頷いた。


 俺は……まだまだ未熟だ。


 目を背けていた事実に向き合わなければいけない。
< 187 / 303 >

この作品をシェア

pagetop