なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬動き出す歯車
一輪花の贈りあいが始まって、一週間が経った頃。


 今香は、曙光より贈られた百合の花を朱熹に渡した。


「ありがとう」


 朱熹は満面の笑顔を返す。


 素人が摘んだ一輪花は、次の日には枯れてしまう。


 それでも、毎日贈ってもらえるので寂しさはない。


 今香は、朱熹に何か言いたげにじっと見つめた。


 その目線に気が付いて、朱熹は顔を上げた。


「どうしたの?」


「いえ、何も……」


 今香は、慌てて顔を背けた。


『陛下が何者かに命を狙われていると朱熹様にお伝えした方がいいかしら……』


 えっ!?


今香の心の声に、朱熹は声をあげそうになった。


 朱熹は必死で平静の顔を作り、何気ないふりを装って聞いた。
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