なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬皇后の威厳
 曙光から林冲の死刑が執行されると聞いてから翌日の朝。


 朱熹はずっと、胸に嫌なかんじのするもやもやを抱えていた。


 気になるのは、『守らなければ』という心の声。


 どうして曙光に言わなかったのだろうと後悔でいっぱいだった。


 あの時は、林冲に騙されていたという事実がショックだったし、林冲が心の声を聴けるということも驚きだった。


 曙光と話せる時間は半刻しかないというのも、朱熹の冷静な判断を曇らせた。


 時間が経つにつれて、やはり言うべきだったという結論に至る。


 言ったところで何かが変わるのかと問われれば、それは分からない。


 大して重要なことではないかもしれない。


 でも、林冲にとってはとても大事なことに違いないのだ。
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