なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 彼女たちに悪意がないと分かっているのといないのでは気持ちの落ち着き度合いに差が出る。


 とりあえず好意に甘えて、今日は寝るとしよう。


 明日からとても忙しくなると彼女たちの心の声は言っていた。


 何が起こるのかまでは分からなかったけれど、とにかく休まなければ。


 朱熹はベッドに仰向けになりながら瞼を閉じた。


 目を瞑ると、まだ体が揺られているような感覚になってクラクラした。


 不穏な胸騒ぎは一向に収まる気配を見せない。


 朱熹はその夜、ほとんど眠ることができなかった。


 朝日が出て、女官たちが起き出し、一日が始まると、本当に目まぐるしいほど忙しかった。


 湯屋に入れられ、念入りに洗われたかと思うと、次は香油をつけて髪に櫛を通す作業が延々と続いた。


 そして今まで見たこともない上質な絹素材でできた薄桃色の鮮やかな華服に着替えさせられ、濃すぎではないかと思われるほど白粉を顔に塗られ化粧を施された。
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