なりゆき皇妃の異世界後宮物語
女官たちが部屋から出て行くと、武官の美男子はまじまじと朱熹を見つめた。


『あの堅物の陛下が一目惚れした女と聞いて、どんな絶世の美女かと思ったら、案外普通だな……』


(陛下が一目惚れ!? とんでもない嘘を吹き込まれたのね)


「あの、あなたは一体……。私の兄という設定らしいですが……」


 おずおずと聞くと、武官の美男子は『ああ、説明が先だった!』と心の声が言い、優しそうな笑みを見せた。


「私は紫秦明。歳は二十三が、太尉の位に就いている」


「太尉!?」


 朱熹が驚くのも無理はない。


太尉とは皇帝陛下の次に偉い三公のうちの一つの役職で軍事担当宰相である。


「君は陛下に見初められて、正妃になるそうだね。

だが、肩書のない女性をいきなり正妃には難しい。

そこで、紫家の令嬢という最高の肩書を武器に後宮に上がることになった」
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