なりゆき皇妃の異世界後宮物語
答えは簡単だ。


これが曙光の素の顔なのである。


怒っているわけでも、考え込んでいるわけでもない。


ただ、皆が全員退出してから、ゆっくり部屋を出ようと思っていただけである。


「陛下、機嫌が悪そうなところ申し訳ないのですが、少し宜しいですか?」


 九卿のうちの一人、林冲が曙光に話し掛けた。


「いや、機嫌が悪いわけではない」


「知っております」


 林冲は悪びれることなく微笑んだ。


 曙光はムッとしたような顔を林冲に向けたが、怒ってはいない。


これくらいのことで怒るような器の小さい男ではない。


これが彼の素の顔なのだ。


「どうした? 会議で何か言い忘れたことがあったのか?」


 林冲は会議中ずっとうたた寝をしていた。


だから、何か大事な案件を発言し損なったのかと曙光は思った。
< 59 / 303 >

この作品をシェア

pagetop