なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「いいえ、会議のことではありません。

先日、皇后様の宮中ご案内役を申し付けられましてね……」


「朱熹の?」


 いつだって表情を崩さない曙光の瞳が揺らいだ。


 ほんの一瞬見せた曙光の動揺に、林冲はまるで気がつかなかったかのように話を続ける。


「皇后様は本が好きなようで、府庫を大変気に入られたようでありました」


「そうか、それは良かった。

……朱熹は元気そうか?」


「ええ、顔色も良く、後宮の女官たちとも上手くやっているそうです」


「そうか、それは良かった」


 曙光の声色には安堵する優しい気持ちがこもっていた。


「皇后様はとてもお優しい方ですね。

私のような老人にも労わって、よく話を聞いてくれます」


「そうか……」


 曙光は朱熹が褒められて、自分が褒められた以上に嬉しく照れくさかったので、視線を下に移した。


「しかし……少し、寂しそうでしたよ」
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