なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「え……」


 目線を上げ、林冲の顔を見つめる。


林冲はニコリと微笑み、「それでは、失礼致します」と頭を下げて部屋を出て行った。


寂しそうだったと言われて、曙光は急に気が気ではなくなってきた。


心の中で激しく動揺している曙光に、今度は別の者が話し掛けてきた。


「おい、機嫌が悪いのか?」


 こんな横柄な態度で話し掛けてくる奴はあいつしかいない。


 横を向くと、秦明がニヤニヤした顔で立っていた。


「機嫌が悪いわけではない」


「知ってる」


 どいつもこいつも……。


曙光は呆れてため息を吐きたくなった。


 もうネタにされている。


「聞いたぞ。俺の妹、寂しそうだったんだってな」


 俺の妹と言ってくるのが腹立つが、建前上そうせざるを得なかったので仕方ない。


「……そうみたいだな」


 ふいと顔を背けてぶっきら棒に言い放つ。
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