なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 表向きは、朱熹に敵意を向ける者はいなくなった。


 むしろ媚び売る者が増え、朱熹の権力は絶対的なものとなった。


 けれど、人の心の声が聴こえる能力を持つ朱熹は、笑顔で近寄ってくる者たちのどす黒い感情を直接受けるのである。


 これまでは、皇后になったのに、陛下が訪れなくてかわいそうという憐れみに近い同情の声が多かったのだが、一夜にして嫉妬や憎しみの声が多くなった。


 朱熹付きの女官は、朱熹が出世することは自分の出世と同じことなので喜ぶ意見が多いのが幸いだが、部屋から外に出ると心の声の悪口で耳が痛くなるほどだ。


(これで……良かったのかしら?)


 曙光は朱熹を気遣って部屋に来てくれた。


 結果はどうであれ、曙光の気持ちは素直に嬉しい。


 昔から、人というのは表面上と内心は違うというのを知っている。


万人から好かれることは無理だし、人の目を気にしていたら何もできないと学んだ。
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