なりゆき皇妃の異世界後宮物語
失礼なことではあるが、曙光もいつものことだと思って何も言わない。


「おいおい聞いたぞ、ついにお渡りしたらしいじゃないか」


「行けと言ったのはお前だろう」


 曙光はニヤニヤして近付いてくる秦明に向かってムッとした表情で言った。


「俺が遠征で宮廷を離れている間に、そんな面白いことがあったなんてなあ」


「ずっと遠征に行っていたらいいものを」


「照れるな、照れるな。……で、どうだった?」


「……どうって何がだ」


「朱熹ちゃんの抱き心地だよ。良かったか?」


「帰れ」


 曙光は冷淡な眼差しを向けて、本気で言った。


「おい、怒るなよ。冗談が通じない男だなー」


 秦明は曙光の肩をポンポンと叩き、曙光はうっとおしそうにその手を払う。
< 95 / 303 >

この作品をシェア

pagetop