なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 秦明の珍しく真剣な眼差しに、曙光は一瞬口を噤んだ。


「……分かっている。だが、俺はあの人を待っている」


 秦明は、ハッとした。


「まさか……お前は今でも?」


 曙光は答えず、窓から見える遠くの木々を見つめた。


まるで誰かを探すように。


「まったく、お前には呆れるよ。

即位前のお前を知らなければ、単に女が怖いか、女に興味がないのかと思うところだったよ。

皇帝になってからだもんな、お前が女に手を出さなくなったのは」


「私に世継ぎができたら、今度こそあの人は皇帝になることを諦めるだろう」


「あの人が皇帝に相応しいと思っているのはお前くらいだよ」


 秦明は盛大なため息を吐きながら言った。


 曙光があの人を崇拝していることは、昔から知っているので、これ以上の説得は諦めた。
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