彼女は、肝心な言葉が足りない。
「ん?どうした?」
紡ぎそうになった言葉を無理矢理呑み込んで、ううんと首を振る。
彼に悟られてはいけない。
彼が誰にも打ち明けていない秘密を、私が知っているなんて。絶対に。
「なんでもないよ。待ってればいいんでしょ」
話を逸らすように膨れっ面でそう言う。
堀田さんは大した話じゃないと思ったのか、何も聞かないでちょっとしたキッチンスペースに足を進めた。
「……はあ、」
黒を白という彼だからこそ。