亘さんは世渡り上手

俺と亘さん




「あっ……あの、和泉くん……っ」


「んー?」


「恥ずかしい、です……っ」


「彼女と二人きりなのに、何もしない男がいると思う?」


「あ……」



俺の腕の中で、亘さんは顔を真っ赤にして縮こまっていた。


俺はそんなことなんてお構い無しに、亘さんの肩に頭を寄せる。背中に手が触れるたびに軽く反応する亘さん。可愛くて仕方がない。


はぁ……やっとこうやって亘さんと恋人らしいことができてる、俺……。


父さんが帰ってくるまで、放課後俺の家で二人きり。


俺はひたすら亘さんを抱き締めて、ストレスを解消していた。


皐月のせいでいろいろあったから全然休めなかったしな。せっかく付き合えた亘さんとそんなに関係が変わらなかった毎日ともおさらばだ。



「ん……和泉くん……」



俺が動くたびに小さく震えていた亘さんが、だらんと身を預けてくる。


ん? なんか、様子がおかしいような……。



「わたし……」



目の焦点合ってなくないか……?


とろんとした、誘うような表情。俺のシャツをぎゅっと握りしめて顔を胸に擦り付けてくる。


あっ、これ、あれか? そういう、タイミング?

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