亘さんは世渡り上手

俺と叶葉



――今日はクリスマスイブ。


とはいえ、普通に学校はある。


どうせなら冬休みにしてほしいものだけど、今日は終業式のみ。冬休みは明日からだ。一日くらいなら見逃せる。


終業式が終われば、着替えて亘さん家で昼食ををいただく。それから、亘さんとデートだ。


亘さんもまだ来てないし、暇だな……。


教室で予鈴が鳴るのを待つ間、今日の予定をぐるぐると頭の中で考える。



「かっ、カチコミじゃーい!」


『おおーっ!』



……何やってんだ、谷口のやつ。


おそらく剣持先輩の友達である数人を引き連れて、廊下を走っていく姿。


頑張ってるんだなぁ、あいつも。


谷口が消えた方向をぼぅっと見たままにしていると、そこから三好先輩が現れた。


どことなく困った表情に見える。



「おーい、和泉くん」



そして手招きをしながら俺に声をかけてくる……。


なんなんだ、この人は。なんでこんな日に限って近付いてくるんだ。



「はぁ……なんですか」



しぶしぶ席を立って、三好先輩の方へ向かう。



「今日三人の女の子からデートに誘われたんだけど、誰か一人に絞ったほうがいいかなぁ」


「どうでもいいんですけど。勝手に決めてください」



自慢しにきたのか? 俺には効かないけど。

< 272 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop