亘さんは世渡り上手
今日見る映画は、少女漫画が原作だ。上映スクリーンの中に入れば、中高生の女子と男女のカップルだらけだった。
ふむ、これは利用できるかもしれない。
俺は隣に座る亘さんに寄りかかって耳打ちをする。
「俺達も、恋人みたいに見えるかもね」
「……え」
亘さんの頬は赤くなった。
ここは喜ぶところなんだろう……けど、作戦が成功したらしたらで、なんか複雑な気持ちになるな。
亘さんは鉄壁ガードだと思ってたから、意外と普通なところもあるとどう反応していいかわからない。
どうせ彼女なんてできたことないですよ。女の扱い方なんてわからない。特に亘さんみたいな、心の読めない人種はね。
「わ、わたし達、友達じゃなかったんですか……?」
「男女の友情は、いつまで続くものなのかな」
「そ、そんな……」
ゆっくりと明かりが暗くなっていく。
スクリーンの光だけが亘さんを照らした。
「和泉くんはわたしと友達、やめたいんですか……?」
本音としてはやめたい。
だけど――
その本気で悲しそうな目はやめてほしい。服の袖をつまんでくるのもやめてくれ。
肯定、できないだろ。