彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜



「コンタクト?俺が?!」


水を一口飲んで、史明は顔をしかめた。


「あれは、手入れとかいろいろ、手間がかかるんだろう?俺の手に負えると思うのか?」


たしかに、自分のメガネさえ拭くこともままならない史明に、ソフトであろうがハードであろうが、繊細なコンタクトレンズを扱えるはずがない。史明の明確な自己分析を聞いて、絵里花は納得してしまった。


――ま、たまにしか見ることができないから、〝ご褒美〟になり得るんだけど。


と、ラーメンを食べ上げた絵里花が、いつものように前向きに思いを巡らせた時だった。


「コンタクトにするつもりはないけど、今日はこれから、メガネを外して行きたい所がある」


史明の決意を表明しているかのような口調を聞いて、絵里花は驚いたような顔を史明へと向けた。


「……メガネを外して、どこに行こうって言うんですか?」


どこに行く以前に、史明は何をしようとしているのだろう?絵里花には皆目見当もつかなかった。


「君が元彼氏とあのレストランで食事をして、その後行っていた場所だ」

「……え?」


今さら崇のことを持ち出してきた史明の質問の意図が分からず、絵里花からは戸惑いの声しか出てこない。

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