彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜
史明が、さっき遭遇した崇のことを、まだ気にしていたとは…。もしかして、ほんの少しくらい〝やきもち〟を焼いてくれてるのかもしれない。そう思うと、何とも言えない感覚が絵里花の中を過っていく。
「君と行っていたあのレストランに、今の彼女とも来てたくらいだから、多分この後、あの二人はその場所に行くだろう」
史明の読み通り、崇はそうする可能性が高いだろう。クリスマスにふさわしい素敵な店を自分で開拓できるほど、崇は機転の利く男ではない。
「その場所に……私たちも行くんですか?」
「俺がメガネを外すと、それなりに見えるらしいし。俺のせいで、君に恥をかかせたままじゃいられない」
絵里花の脳裏に、『ダサすぎない?』という先程の今日子の言葉が浮かんだ。
「私は別に恥ずかしいなんて、思ってませんし、それに、メガネをかけてる岩城さんも素敵なんですけど?」
「……え……」
絵里花の素直な言葉に、史明は思わず顔を赤くした。
「……そ、そういう問題じゃない。あの二人にはもう少しマトモな俺を記憶しておいてもらいたいんだ」
「はあ…」
歴史のこと以外には興味を示さない史明が、何をそんなに意気込んでいるだろう?絵里花は、首を傾げて史明を見つめながら答えた。