甘い恋は復讐の後で
「あらあら。どうしました?お嬢さん。」

 マスターは謎が多いけれど温和な人で、こういう事態を任せて悪いようにはしない人だ。
 マスターに引き渡せば……。

「伶央くん。
 また喧嘩してないでしょうね?」

「いや。向こうが勝手に逃げた。」

 信じていない疑いの眼差しから逃れるように店の準備に取り掛かろうと店の入り口へと足を向ける。

「……Crazyってお店の名前…。」

 縮こまってついて来ていた女はなんとも呑気なことを口にした。

「えぇ。そうですよ。
 ようこそ。Bar Crazyへ。
 さぁ奥へ。」

 マスターがバックヤードへと案内しかけて俺に声をかけた。

「伶央くん。自分が引き入れたのですから何か服を貸してあげなさい。」

 どうして俺が……。
 不満を浮かべつつもマスターには反抗できない。

 仕方なく女を追い越してバックヤードへ向かった。

「ほら。これを貸してやるからさっさと帰るんだ。」

 ロッカーからここの制服のシャツを1枚投げてやって事務所から出ていく。

 悪い癖だ。
 こんな女、助けてやることないのに。





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