甘い恋は復讐の後で
「伶央さん?
 あの……触っても?」

 気づけばすぐ隣まで近づいてきていた莉緒が潤んだ瞳で俺を見上げていた。

 こいつ……。

「どうなっても知らないからな。」

 何度かハスとして忠告しているはずだ。

 いや、そうじゃないだろ。
 拒絶して突き放して、それとも逆にもっとひどいことを………。

 小さな手が頬に触れて思考は停止した。

 ひんやりと冷たいそれに心はビクついて、けれど次第にその心地よさに身を委ねた。

 もう片方の手が頭に添えられて自分の意思とは関係なく簡単に引き寄せられた。
 肩に頭を乗せ、抱き寄せられるように背中に腕を回される。

「このまま……少しでいい。
 このままここにいて。」

 自分の声とは思いたくない情けない声が出て目を閉じた。


< 114 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop