甘い恋は復讐の後で
 朝、どうしてか不機嫌な伶央さんに「勝手に帰れよ」と送り出された。
 それでも寝癖のついた頭でマンションの下まで見送ってくれて駅の方向を教えてくれた。

 根は優しいんだよね。
 やっぱり。

 嵐の日に兄以外の人と過ごしたのは初めて………というより男の人と朝まで過ごしたのは生まれて初めだ。

 急に恥ずかしくなって顔が熱くなる。

 だって抱きしめて眠って……途中、寝ボケた伶央さんに抱き締められて……。
 伶央さんにしてみたら抱き枕代わりだろうけど、だからって。

 夜に兄から何度か連絡が入っていたみたいだけど伶央さんのマンションに来る前に大丈夫って送ったから、平気だと思ったのかな?

 何件かのメールくらいで終わっていた。
 それでも過保護だと思うけど。

 色んなことを考えながら会社に向かう途中、急に話しかけられてドキリとした。

「今日、帰りに話せないかな?」

 声にハッとして顔を上げる。
 立っていたのは大谷くんで、話すのはものすごく久しぶりだ。

 真剣な顔つきで話しかけてきた彼にお試しなんてやめようって話をしなきゃと「私も話したいことがあるの」と答えた。


< 116 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop