甘い恋は復讐の後で
 全て終わるとさすがにクタクタだ。
 それが顔に出ていたようで思わぬ声をかけられた。

「眠いだろ。寝ててもいいぞ。」

 戸締りなど最終チェックをする彼は店内を歩き回っている。
 馬鹿にして、というよりも気遣いに聞こえた私は寝ボケてはない……はず。

 バーは深夜3時の閉店だった。
 それまでカウンターで気づけばコクコクとうたた寝をしていてそれほど眠くはない。

 ただ、それを言えば子どもだとまた馬鹿にされるのは目に見えているから、別の言葉を口にする。

「アパートすぐなんで平気です。
 伶央さんのお家は?」

「俺の心配はいい。
 お子様にラストまではきつかったか。」

「また!
 眠くなんてないです!」

 やっぱりからかわれた!と憤慨していると伶央さんはハハッと軽い笑いを吐いた。

「悪かった。次は考える。」

 次が……あるんだ。

 彼の気まぐれは私には到底理解できない。

 マスターが作ってくれた『ブシーキャット』 可愛い子猫ちゃん。

 可愛いかどうかは別にして。
 猫なのは彼のことのような気がした。

「まぁいい。ここで待ってろ。
 マスターはこの上に住んでる。」

 鍵を全て掛け終わると外階段の陰に私を隠すように指し示した。
 彼のたまに出る優しさに完敗する思いだった。







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