青夏ダイヤモンド
「沖田くんと行ってきなよ」
「でも・・・」
「私は脩と回ってくるからさ」
「え!?約束したの!?」
「まだしてないけど、私は大丈夫だから沖田くんと回りなよ」
「脩とそんなに進展してたなんてー」
もちろんそんな約束はしていないし、するつもりもないが、そうでも言わないと充希が心置きなく沖田くんを誘えないだろう。
ローテーションで休憩をとる少しの時間をどうにかやり過ごせばいいのだ。
なんなら、早く帰ってきてここを手伝っていてもいいわけだし。
「じゃ、じゃあ、沖田くん誘ってみるね」
充希の嬉しそうな顔を見て、無理していたことがわかる。
嘘をついて良かった。
「鷹野さんと橋下さんって中川くんとも仲良いよね。怖くないの?」
色塗りをしていた女子が怪訝な顔で訊ねる。
「顔がねー。でも見た目だけだよ、怖いのは」
「脩は口も悪いけど、見た目ほど怖くないよ」
半信半疑な顔をした女子達は私達の後ろ側に視線を向け、すぐに顔を青くして慌てて作業に取り掛かった。